大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(行ナ)27号 判決

原告 坂本吉三郎

被告 特許庁長官

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、昭和二十七年抗告審判第九七六号事件について特許庁が昭和二十七年七月二十三日なした審決を取消す、訴訟費用は被告の負担とする旨の判決を求め、その請求原因として陳述した要旨は次の通りである。

原告は、昭和二十六年一月二十日特許庁に八重山桜の紋章図形の外廓のみを連結した二重の桜花輪廓図形と該図形内に「ゴジツク」体の様な線で描出せる「砂糖ノ友」の文字を左横書して成れる商標(以下本件商標という)につき、商品を第四十五類加味品と指定して登録の出願をしたところ、同年十一月七日拒絶査定をしたので、更に、抗告審判の請求をした。同庁は、昭和二十六年抗告審判第九七六号事件として、審判した上、本件商標は、同庁の引例に係る他人の商標登録第四〇五三三二号(昭和二十五年十月十六日出願、昭和二十六年十一月二十日登録)と比較対照して、本件商標は二重の桜花輪廓は配してはいるが、「砂糖ノ友」の文字は極めて顕著に表わされていて、世人の注意を強く引く部分であるというべきであるから、「サトウノトモ」と称呼すべきであること取引界の通念に照し極めて自然であるといえる。又「ゴジツク」体で、「サトノ友」の文字を縦書し、その下部に「ゴジツク」体で「SATONOTOMO」の「ローマ」文字を横書して成れる引例商標は「サトノトモ」と称呼すべきことは明かであるから、両者の称呼は五音中第二音の「ト」音において長音であるか否かの差異であつて、このような差異点は取引の経験則に徴し微差に過ぎない、両商標の称呼は全体として彼此相紛らわしいというを相当とするから、両商標は称呼上互に類似商標であるとし、且つ引例商標の指定商品は第四十五類他類に属しない食料品及加味品であるから指定商品も互に牴触するもので、商標法第二条第一項第九号に該当する旨判断し登録を拒絶すべきものとした。しかし、(一)本件商標は前記の通り八重山桜の紋章図形の外廓のみを連結した二重の桜花輪廓図と「砂糖ノ友」の文字との二つの要部から構成される図形と文字との結合商標である。すなわち、桜花輪廓図形と「砂糖ノ友」の文字とは共に特別顕著に表わしている。よつて、桜花輪廓図形の部分も「砂糖ノ友」の部分と共に世人の注意を喚起する部分であるというべきであるから、本件商標からは「桜印ノ砂糖ノ友」という称呼を生ずるものである。(二)仮りに本件商標が「桜印ノ砂糖ノ友」といわれずして、単に「砂糖ノ友」と称呼されるとしても、その第二音である「ト」音において「トウ」の長音であるのに対し、引例商標は「ト」の短音であるから、この長音か短音かの差異点によつて称呼上両商標は明瞭に区別し得るのである。右の差異は本件商標全体に影響するところ極めて大きく、この部分的差異のため称呼上両商標は全体的に相違を生ぜしめ称呼上区別し得られるものである。(三)なお審決は審理不尽の違法がある。よつて、審決の取消を求めるため本訴に及んだのである。

被告指定代理人は請求棄却の判決を求め、その陳述した答弁の要旨は次の通りである。

原告が、原告主張の日に原告主張の図形及「砂糖ノ友」の文字より成る本件商標につき、原告主張の商品を指定商品として登録出願をしたのに対し、特許庁が、拒絶査定をしたので、原告は抗告審判の請求をしたところ、同庁が原告主張の理由の下に抗告審判の請求成りたたない旨の審決をしたことはこれを認めるが、審決が違法なりとする原告の主張はすべてこれを争う。本件商標は前記の構成を有するものであつて、称呼上より見れば、「砂糖ノ友」の文字は極めて顕著に表わされていて世人の注意を引く部分であるから結局、取引界の通念に照し「砂糖ノ友」の文字が商標の主要部と認められ、それから自然の称呼として「サトウノトモ」という称呼が生ずるものというべきであつて、原告主張のように「桜印ノ砂糖ノ友」というような称呼を生ずるものではない。けだし、桜花輪廓図形は「砂糖ノ友」の文字に圧倒されて背景図形のような単なる輪廓模様としか見られないからである。(二)次に、本件商標は「サトウノトモ」と称呼されることは前記の通りであり、引例商標は「サトノトモ」と称呼されることはその構成上明白であつて、その称呼を比較すれば、前者は六音、後者は五音より成るものであるところ、前者の六音中の五音は後者の五音と全く同じで、相異点は前者の三音「ウ」、すなわち、前者の「ト」を長音とした点であつて、この「トウ」及び「ト」の発音を実験して見れば長短の差はあるにせよ、極めて紛わしい発音であることは常識上考えられるところであるから「トウ」と「ト」との発音の差異は結局微差たるにすぎないものといわなければならない。右両商標の全体の称呼より観察すれば結局彼此相紛わしく互に類似しているものというべきである。(証拠省略)

三、理  由

原告が、八重山桜の紋章図形の外廓のみを連結した二重の桜花輪廓図形と該図形内に「ゴジツク」体の様な線で描出せる「砂糖ノ友」の文字を左横書して成れる本件商標につき、商品を第四十五類加味品と指定して特許庁に登録の出願をしたところ、拒絶査定となつたので、これに対し、同庁に抗告審判の請求をしたが、同庁は原告主張のような理由の下に抗告審判の請求成りたたない旨の審決をしたこと及び審決の理由に引例した他人の権利に属する登録商標第四〇五三三二号が「ゴジツク」体で「サトノ友」の文字を縦書し、その下部に同じ書体で「SATONOTOMO」の「ローマ」文字を横書したもので、その指定商品が他類に属しない食料品及び加味品であることは当事者間に争がない。

よつて、本件審決が原告主張のような点において違法とすべきものであるかどうかについて判断する。

先ず、原告主張の(一)の点について考えるに、本件商標の構成は前記の通りであるところ、成立に争のない甲第一号証(出願書類添付の本件商標見本)によると「砂糖ノ友」の文字は桜花輪廓図形内中央部に左より右に横書して配列されているから、この商標を看る者をして一見してその部分に注意を引くように極めて顕著に表現されており、したがつてその外廓の二重の桜花輪廓図形は、単にその背景的存在のようとしか見られないから、右商標中の「砂糖ノ友」の文字はその商標の主要部であるということができる。結局商標全体から見れば外廓図形は寧ろ附加的の部分でしか感ぜられず、したがつて、これを呼称する上において原告のいうように両部分は一体不可分的のものとして「桜印ノ砂糖ノ友」と呼ばれるものとは断じ難い。およそ、商標は通例、取引者又は需要者間において簡明直截に称呼されるのが自然であるとは実験則上首肯し得るところであるから、右の場合顕著に表わされている部分である「砂糖ノ友」の称呼が通例、容易に生じ易きものとなすのが相当であつて、殊更に「桜印ノ砂糖ノ友」というような冗長且ついいにくい称呼を自然に生ずるものとはなしがたい。すなわち、本件商標からは「砂糖ノ友」の称呼は生ずるものと見るのを通例とすべきも「桜印ノ砂糖ノ友」の称呼は生ずるものとはなし難いから、これと反対の見解に立脚する原告の主張は採ることができない。

次に原告主張の(二)について考えるに、なるほど、本件商標の「砂糖ノ友」の第二音「ト」音においては「トウ」の長音となり、引例商標「サトノ友」の語音中の「ト」音は短音であることは明かであるから長短の差異あることは原告のいう通りであるが、本件の場合においては、この「トウ」の長音、及び「ト」の短音のみの発音をするだけでなく右各音をそれぞれ「サ」音と「ノ」音との間に入れて「サトウノトモ」及び「サトノトモ」と一連の発音をするものであるからこの一連の音よりなる両者を発音するときはその全体の音調は著しく似かよい、彼此相紛わしきものとなることは実験則上首肯し得るところである。すなわち右の場合、たとえ聴者に与える音調の差異がありとするも、それは微差たるにすぎないものと断ぜざるを得ないのである。かような、差異は商標の称呼上より見れば両者相紛わしく互に類似するものというべきである。この点に関する原告の主張もまた採用することができない。

(三)なお、原告は審決は審理不尽の違法があるから取消さるべきものであるというにとどまり具体的に審決を違法として取消すに足る事実を挙示しないからかような主張は採用するを得ない。

以上説明した通り原告の主張はいずれも理由なく、且つ右両商標における指定商品は相牴触するものであることは審決の説明の通りであるから、特許庁が本件商標は商標法第二条第一項第九号に該当するものとして登録を拒絶したのは相当で審決はこれを取消すべき違法がない。よつて本訴は理由なきものとしてこれを棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 小堀保 梅原松次郎 原増司)

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